
人間は死ぬ瞬間まで、死なんて考えるもんじゃない。「坊主が死を見つめて」なんて言うけど、そいつは馬鹿だね。死ぬなんて、死ぬまで分かりはしないもんだ。ページ118

フィットネス業界の古い知り合い、小池修さんの著書です。彼は、元メガロス(上場企業)の役員でした。介護事業会社、リハプライム株式会社を興しました。リハプライムは、定着率96%とのこと、素晴らしいです。ブラックといわれている介護業界ではありえない定着率です。フィットネス業界の人事管理手法が垣間見えます。「敬護」を旗印に「高齢化日本をハッピーリタイアメント社会に変える」ことをミッションにしています。10年かからず、185名の社員を雇い、40数カ所の拠点を運営しています。凄いなあ!

VRは、できないであろうことにはうってつけだが、現実世界にしないであろうことには使うべきではない。スーパーマンのように月まで飛んでいくのは問題ない。だが仮想世界で大量殺人を行うのは-それがリアルに作られていればなおさら-問題がある。ページ332

努力に意味はあると言っていますが、世の中の成功者は「たまたま」であると考えているようです。救いもあります。逆にいうと、チャレンジの数が多ければ、成功の確率も必ずあがるものだということも意味していますから…。

もし同じ規範を全員が守るならば、社会は変化せず停滞する。いつまでも同じ価値観が続く、歴史のない社会です。犯罪のない社会は原理的にありえない。どんなに市民が努力しても、どのような政策や法律体系を採用しても、どれだけ警察力を強化しても犯罪はなくならない。悪の存在しない社会とは、すべての構成員が同じ価値観で染まって同じ行動をとる全体主義社会です。犯罪のない社会とは理想郷どころか、ジョージオーウェルの作品「1984年」に描かれるような、人間の精神が完全に抹殺される世界に他ならない。ページ270

水や空気は流体学で説明がつくそうですが、自立的な性質をもつ自動車などは、渋滞学でしかわからないことを知りました。山火事や感染を拡大させないためには火の「渋滞」を起こせば良い、お金持ちになりたければお金の「渋滞」を起こせば良いなど、示唆に富んだ内容です。

ハエはたとえ餌が自由に食べられる環境でも、体内にカロリーを多く蓄えていればいるほど長生きする。より多く生殖すると、体内のカロリーが使い果たされる。そして死んでしまう。ページ122
進化生物学者は、これら全ての問題を解決するたった1個の「魔法の弾丸」や不老不死の霊薬などないだろうと知っている。そうではなくて、老化は多頭の怪物なのだ。ページ203

ぺストが大流行しなくなった理由は、鉄の少ない遺伝子「ヘモクロマトーシス」を持っている子孫が増えたからだそうです。トキソプラズマに冒された女性は淫乱になるとか… 圧巻は、ミトコンドリアをはじめ、人間のDNAのおよそ3分の1は、もともとウィルス由来で、人間は、ウィルスや細菌を組み込むようにして作られているとのこと。驚きました。人類の体に毛がないのは、水生生活またはそれに近い過去があるからだ。これもまた驚きました。初めて読む知見です。本当かどうかは解りませんが楽しく読めました。

処罰の正当性は国家だけに認められる。法治国家である以上、原則は日本も同じはずだ。「すでに社会的制裁を受けている事情を考慮して、寛大な処罰にする」こんな判決が下るのは原理的におかしい。懲罰権の私的行使を裁判官自らが認めるのは、法曹界の自殺行為である。公式な刑罰とリンチの乖離が性犯罪では特に大きい。ページ310

もともと私は、自分の人生を3つの期に分けて考えていました。80年をこの世での寿命として、最初の20年はこの世に生まれ、独り立ちして人生を歩き始めるまでの期間。第二期の20歳から60歳までの40年は、社会に出、自己研鑽に努めながら、世のため人のために働く期間。そして第3期は、60歳からの20年間で、死の準備に充てるべき期間です。社会へ出るのに20年の準備期間を要したように、死をを迎えるための準備にも、20年あてます。ページ228

この本は名著です。40年前に是非読みたかった!「思考」の本質は、メッセージを作り出すこと、「論理」は、演繹と帰納の織りなす綾であること、「分析」は、突出点と変曲点をグラフで見いだすことと了解しました。豊富な事例と明快な説明に驚きました。

心理学を実生活に活用するための本です。他人にだまされないように、逆に、思うような結果を出すための人間の心理を分析しています。セールスマンや詐欺師が巧みに心理の穴を突いてくるて手練手管がよくわかりました。自らの販売や説得に利用したこともあるし、だまされたことも度々です。スポーツ観戦に熱中しすぎる人は「パーソナリティーに隠れた欠陥、つまり否定的な自己イメージがある人々」というのは卓見です。また、「革命の担い手となりやすいのは、…生活の味をいささかなりとも経験した人々…当てにしていた経済的・社会的改善が突然手に入りにくくなったときに…武力蜂起してそれを確保する…」その通りかもしれません。

道徳の起源に関する主張の第一の部分は、過去の人類でで集団による処罰が重く頻繁になってくると、処罰は逸脱者の適応度を下げるため、人間の遺伝子プールに多大な影響を及ぼした、というものだ。第二のそれほど明白でない部分は、そうした処罰の重さとコストが増すと、よりよく自制できる人に有利に働く選択圧が生じた、というものだ。ページ184
…ひょっとしたら新たな疫病が、病気の性質によっては協力を促し、その際に敵同士も仲間になるようなに仕向けるかもしれない…。ページ435

普段の購買行動について面白い事例が満載。楽しめました。ホテルの珈琲が高くても納得する理由がよくわかりました。手作り、こだわり商品を高く買う理由もよくわかりました。個人的には、自分の購買行動を大いに反省させられました。また商売をするときのコツも理解しました。例えば、隣の韓国では、リーマンショックの時に、クレジットカードの未払率が10%を超えたそうです。支払が後なので、つい誘惑に駆られて財布のひもが緩くなるのはよくわかります。購入させるためには人間の心理の研究がとても大事だと理解しました。「ヒトは騙されやすい」というのが感想です。

大阪大学の石黒先生は、ロボット研究は「人間とは何か」を知るための活動だと断言しています。人間とは「意識」であるとも言えます。この謎を脳生理学者がどのように考えているか、とても興味深く読みました。意識をもつ物体を作り出せれば、鉄腕アトムも可能だし、シンギュラリティも起きると思います。残念ながら、本書での結論は「よくわからない」です。「視床-皮膚系で他と区別する」「我々が知っていると思っている世界は、我々の得意な動画見をせてくれるものに過ぎないかもしれない」と。まるでマトリックスの世界です。

今まで普通に考えてきた経営手法が誤っていたのかもしれないと気づきました。マズローの欲求説やマクレガーのY理論は、従業員たちを気持ちよく働かせることによって、成果をあげるための方便にすぎなかったのではないか? 本当に働いている人のためではないのではないかと反省しました。「社員を不当に安い給料で働かせるために仕事をより楽しいものにするのは搾取と変わらない。」痛い意見です。

白痴の青年が手術により天才に変貌、そして白痴に戻る話です。「10代に薦める泣ける本」と帯にありましたが、泣けませんでした、むしろ怖い本です。恋人のアリス、フェイ、母ローズ、妹ノーマ、とても魅力的で、切ない女性がたくさん登場します。幾多の修羅場が訪れ、主人公チャーリー・ゴードンの抑圧されていた記憶が解き明かされていく過程に驚きと悲哀を感じました。最後の1行「ついしん、どーかついでがあったらうらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやてください」に物語の余韻と深い感動を覚えました。

「…あなたはある病気にかかっているかもしれないと心配しています。そこで、あなたは検査を受けます。この検査は、もしあなたが罹患しているなら90%の確率で陽性になりますが、罹患していなくても5%の確率で陽性(偽陽性)になることが知られています。検査の結果が陽性であったとき、あなたが罹患している確率はどのくらいでしょうか。多くの人は90%とか95%とか、その間とかといった値を答えます。でも正しい答えは、これだけではわからないです。…したがって、陽性反応が出た人の罹患している人の条件付き頻度は、たったの15.38%になるのです。」
一見、正しく見える選択が、数学的には必ずしも、そうではないことを説明した部分です。

即答を求められた場合、「なんか嫌だな」というような直感を感じたら、たとえ良い話であっても「ちょっと考えさせてください。話が流れた場合は仕方ないです」と、塾考する時間を作る。その時に感じた「なんか嫌」という感覚には、必ずそれなりの理由が存在する。だから、時間を作りその「嫌」を分析することで理由を突き止める。そして、トータルで考えて、嫌な部分込みでも受ける価値があるかどうかを判断する。ページ144

私も著者がこの本を書いた頃の年齢になりました。現在65歳、淡々と読める年齢になりました。「老人の特徴としてはものを忘れる、体力を弱める。よだれを垂らす、…二重視、物語の繰り返し」みなあてはまります。「老人力」がついてきたのだと思います。記憶の悪さは若い頃からで、人の名前はすぐ忘れるし、ずっとボケていたようにも感じます… 現在、一生懸命仕事に取り組むのですが、もう一人の自分が「なんちゃってね」とつぶやきます。「老人力」そのものです。

がん患者さん専門の精神科医の書いた本です。私の経験的、哲学的には決着のついている問題です。医療の現場で、普通の人がどのように乗り越えていくかの記録を興味深く拝読しました。自由に、思いのままに生きることが大事です。「死」を考えることが「生」を考えることだということを再認識しました。若い人が読めば、今日の生き方が変わると思います。

このように、人間と言うものは、真の理由としてはやる気がないだけなのに、意味の有無などという話を持ち出して、やらない理由作りをするものです。何かを学ぶかどうかについて迷っているときは、「これって必要なの?」などの理由が、本当に当てはまるか吟味することで、不毛な「やらない理由探し」をしている自分と向き合うことができるのです。ページ99

コロナパンデミックに触発されて、同じように恐ろしい疾患を覗いてみたくなりました。細菌でもウイルスでもない殺人タンパク質(プリオン)の話です。ヨーロッパに遺伝性のタンパク質異常の一族がいます。一族のものは50歳ちかくになると不眠で亡くなるのです。パプアニューギニアでは、食人習慣のある一族が、精神障害と衰弱で死亡する「クールー」という病気があります。このヒトの病気と羊の病「スクレイピー」と牛の病気、「狂牛病(BSE)」が似たような病気であることがわかってきました。かつて、ヒトに食人習慣があったことに驚きました。知らないうちに食人すれば大量の死亡がおきることを理解しました。

経営に成功する方法はわからないが、失敗する方法はわかるというのは至言です。「リスクを取るのをやめ、柔軟性をなくし、部下を遠ざけ、自分は無謬だと考え、反則スレスレのところで戦い、考えるのに時間を使わず、外部の専門家を全面的に信頼し、官僚組織を愛し、一貫性のないメッセージを送り、将来を恐れていれば、必ず失敗する。ページ224」

昭和10年刊行、和辻哲郎氏の名著です。人間は、歴史だけではなく、風土に大きく影響されていると述べています。人類を「モンスーン地域=湿潤」「砂漠=乾燥」「牧場=湿潤と乾燥の総合」に分類して、風土が人間に与えた影響を論じています。ヨーロッパやシナの情景描写と分析は見事です。解説にも「初めて海外に留学したときのみずみずしい体験と、彼の持つ天才的な詩人的直感によるものであることを何人も否定し得ない」とありました。久々に名文に触れました。

新型コロナがコウモリから中間宿主を経て人に伝染した可能性よりも、これら2カ所の実験室から流出した可能性が高い。ページ256
新型コロナウィルスの全遺伝子情報(ゲノム)の1%未満という狭い領域に、HIVに由来する情報の断片が6つもあった。その入り方には、自然にはありえない特徴が見られる。これは、人為的に挿入したものと考えられる。ページ283

…私たちが直面している最大の危機はウィルスではなく、人類が内に抱えた魔物たち、すなわち憎悪と強欲と無知だ。私たちは今回の危機に臨んで、憎しみを燃え上がらせることもできる。…だが、憎悪や強欲は無知を生み出すような反応を見せる必要はない。思いやりや気前の良さや英知を生み出すような叡智を生み出すような対応もとりうる。ページ10

人工知能を考えるということはヒトを考えることです。人工知能がヒトの仕事を奪うこともないし、自動運転は実現しないと示唆しています。現在人工知能といわれているものは「道具」に過ぎません。人間の本質は「目的を決めること」で、身体を持たない人工知能ではヒトの代わりはできません。ヒトは錯覚するからこそ認識できるし、場当たりだからコミュニケーション(振動論)できることを理解しました。

彼女は生涯、5万人の人と会い、3000人の名前を覚えます。そのうち名前と顔一致させられるのは300人。友達と呼べる人は30人。そして親友は3人です。

成功の秘訣は「心の持ちよう」だと述べています。欲望を否定せず、楽しめる欲望が成功の秘訣だと述べています。「…心のスクリーンに想像というありがたい力を応用して描けば、…強固な信念となって、その信念がいつかは具体化する」と述べています。松下幸之助や浅野宗一郎が教えを乞うていたそうです。

ある日、地球の各都市に巨大な宇宙船が不気味にあたわれるところから物語ははじまります。その宇宙船の存在により戦争や飢餓はなくなり人類に幸福が訪れたようにみえましたが…。人類はまだ幼年期にあり、異星人が見守る中、思いもよらない展開になります。ワクワクドキドキのストーリーです。戦争や飢餓がなくなると同時に、好奇心や向上心がなくなるのは人間の性なのかと哀しい気持ちになりました。人類のもっている悪魔や地獄の過去の記憶が未来の予告だったとは!
























